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ゼンリンデータコムといえば、地図サービスの『いつもNAVI』がよく知られているが、自動車/車載器メーカーなどに対して地図/ナビゲーションサービスを提供するtoB部門がビジネス上では重要な事業になっている。しかし2014年はスマートフォン向けのいつもNAVI」を大リニューアルするとともに、年末にかけては「ルート沿い検索」「オービス&取締通知」「みんなで位置共有」などといった派生アプリを次々にリリースして、改めてtoC分野への攻勢を強めつつある。
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Yahoo!カーナビに代表される無償カーナビも登場しているなかにあって、同社はどのような戦略で地図&ナビゲーション事業を舵取りしていくのか。代表取締役副社長の藤沢秀幸氏に話を聞いた。
◆「いつもNAVI」を核に、無料で利用できる単機能アプリ群を展開
----:現在、いつもNAVIは公共交通機関を含めたドアtoドアの「いつもNAVI[マルチ]」とドライブ向けの「いつもNAVI[ドライブ]」の2つがあり、それぞれに「みんなで位置共有」や「ルート沿い検索」などの派生アプリが登場しています。このアプリ展開戦略はどのような狙いがあるのでしょうか。
藤沢:スマートフォン向けのナビはバージョンアップが容易なこともあって、新しい機能をどんどん追加できる便利さがあります。ただ、「名称や住所や電話番号といったベーシックな検索ができます。グルメのコンテンツを入れましょう、テレビのロケ地検索や観光地情報も入れましょう…」と、こうして機能を増やしていってもこれまでのユーザーにはあまり関心を持たれず、せっかくの新機能が利用されないという事態になっていました。スマートフォンだからこそ機能はシンプルな方向にまとめよう、という原点に立ち返って、分かりやすく1アプリ1機能とし、検索したスポット情報(POI)はナビアプリに渡して案内させる、という流れがお客様にとってはベストなのではないかと考えたのです。
----:そこで単機能のアプリ展開構想が出てきたわけですね。
藤沢:ナビゲーションを利用するシチュエーションを思い浮かべてみると、目的地検索と道案内は違う動機であるということが分かります。知らないところ・行ってみたいところを探す“検索”という行為は「興味」に結びついているのに対して、ナビゲーションは迷わずに目的地に到達するための「機能」なのですね。ナビの利用促進という目的を考えるとき、興味が先か機能が先かといわれたら、行動しようという意思を喚起させる検索コンテンツ、つまり興味が先なのではないかと。位置・場所に対する興味を喚起するコンテンツサービスとして、ルート沿い検索やグルメ案内の「東京 DELICIOUS CLUB」といったアプリを登場させました。いずれのアプリも、主要な機能は無償で利用できますが、NAVIの有料会員ならば、ナビ連携など便利な機能が利用できます。
----:そのいつもNAVI[ドライブ]ですが、10月に実施したリニューアルでかなり使い勝手が改善された印象です。
藤沢:いつもNAVI[ドライブ]は4月に大幅刷新したのですが、デバイス間の汎用性・共通性を重視したあまり、とくに画面の小さいiPhone 5/5Sでユーザーインターフェース(UI)が使いにくいというご指摘をいただきました。そこで、ボタン類の大型化や説明テキストなどの追加もおこないました。
----:いつもNAVI[ドライブ]の売りである3D地図は4月の登場時から好評です。
藤沢:おかげさまで3D地図の部分は他社との差別化という点でいつもNAVI[ドライブ]の売りですね。今のところ、(親会社の)ゼンリンが3D地図をスマホ向けサービスに提供しているのは当社だけです。地図の部分については、当社として事業目的があって「こういう調査をしてほしい」「優先的に使わせてほしい」と依頼すれば、ゼンリン側でその要望に応えてもらえるというのは強みです。
◆現実世界の道路や施設の変更をいかに早く反映させるか鍵に
----:2020年に向けて、東京の周辺道路やスポットは大規模な開発が続いています。カーナビの地図でも、ユーザーニーズに応えるためにアップデートタイミングの短縮化などの要求もでてくるのではないですか。
藤沢:高速道や幹線道路ならば、事前に開通時期がわかりますので、事前に道路のネットワーク情報を入れておき、開通のタイミングでナビの地図に反映させるといった方法で更新します。見た目の地図やPOIは早いタイミングでの対応が可能なのですが、ナビのために使う道路データの場合はルートを引くためのリンク情報を付加しなければならず、それが重い作業になります。ナビ地図更新の短縮化を考える場合、リンク自体の考え方を変えるようにしていかないと行けないと思っています。
----:スマートフォンナビのように測位をGPSのみに頼っている場合は、高架下やトンネルなどで自車位置をロストしてしまうことがしばしばあります。スマートフォンとは別体のセンサーユニットを使って精度向上を図ったり、スマホに内蔵されている加速度センサーなどを利用してGPSをアシストするなどの方法がありますが、御社ではどのようなソリューションをお考えでしょうか。
藤沢:どちらかというと、後者のスマートフォン内蔵センサーの活用についての研究の方が
進んでいます。端末のセンサー性能も上がっていますし、クレードルやホルダーの設置でしっかりと端末の確度と向きを固定できればかなり正確に精度を出せるでしょう。別体センサーについてですが、それなら車両から直接情報をもらうという方法の方がナビアプリベンダーとしては実現に近い話でしょう。少なくとも、車速パルスがあればそれだけでかなりの測位精度向上が見込めます。
◆海外事業はスピード/マルチプラットフォーム対応/低コスト化で勝負
----:次にテレマティクスやプローブについて伺います。いままでは自動車メーカーが独自でプローブもテレマもフルセットでやるという垂直統合モデルでしたが、もはや自前でサービス提供できるメーカーは限られています。こうした情報サービスは集約した方がビジネスとして効率が良くなるものですが、御社としてどのような立ち位置でビジネスをされていくお考えなのでしょう。
藤沢:どれだけの人材と設備をどの事業に投入するかという問題になります。当社の最も重要な部分を占めているtoB向けのナビゲーションサービス領域では、「コストを安く納期を短く、どのOSでも動き、海外も含めてどこの地図のフォーマットでも動かす」ということを年頭にリソースを投入しています。ナビの部分はどこの国だろうとどんな条件だろうとなるべく提供できるようにしたいですね。
----:PNDの登場以来、ビルトイン型も含めて現在は多くの車載器メーカーやプラットフォーム、OS、地図フォーマットが乱立している状況です。ナビアプリケーションベンダーとしてのゼンリンデータコムにとっては、ナビの開発レイヤーが分離されていることは有利ということでしょうか。
藤沢:分離されたことは、ある意味チャンスです。たとえば通信カーナビを提供する場合、自動車メーカーとしては、ナビが途中でハングアップしてしまうことはあり得ない。通信の状態に波があってもカーナビが切れるなどもってのほかです。基本クラウド型だけど、ルートを引いた段階で周辺の地図をキャッシュし、すくなくとも通信状態にかかわらずナビができるる仕様にします。こうしたナビアプリケーション開発のノウハウが競争力になっていくと考えています。
◆モーダルシフト時代を見据えたナビゲーションへ
----:プローブの取り組みついてはいかがでしょうか。
藤沢:プローブの解析・利用技術はすでにできているのですが、いつもNAVI[ドライブ]に限って言えばデータ量が十分とはありません。渋滞情報については現状はVICSのみでの提供
となっています。
データがたくさん出てくれば、単に渋滞情報の提供だけでなく、利用者の嗜好を考慮した目的地のレコメンドやルート提案などが可能になり、パーソナライズ化が可能です。これらのプローブデータとゼンリンの持つ高度な道路情報を組み合わせることで新たなサービスや価値が実現できるかも知れません。
----:最後に、今後のアプリサービスについて御社はどのような方向性は取り組んでいくお考えですか。
藤沢:toBでは海外市場においてナビゲーションエンジンの開発をいかに低コストで実現できるかが重要なポイントになると考えています。国内では、ドアtoドアのナビゲーションとしてはバス/電車やタクシーやクルマなどを融合したモーダルシフト(交通手段の転換)に対応できるルート計算の実現を目指します。特に首都圏では今後さまざまな交通が大きく変わっていくので、変化を迅速に反映できできる体制と仕組み作りを構築していきたいと思います。
《聞き手 神尾寿》
《レスポンス まとめ・構成 北島友和》
slayer
最強のニート
音楽鑑賞 ドライブ 衝動買い
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