ジュリアン・ムーア迫真の演技 若年性アルツハイマーを描く「アリスのままで」

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　【エンタなう】なんともやるせない映画を見てきた。切れ者の中年言語学者が突然、若年性アルツハイマーになる「アリスのままで」（公開中）。本作でアカデミー賞主演女優賞に輝いたジュリアン・ムーアは、取り乱すまいと、もがきながら人間らしさを保つ演技が迫真だ。

　ニューヨークのコロンビア大で教えるアリス（ムーア）は医学博士の夫、ジョン（アレック・ボールドウィン）と成長した３人の子供に恵まれ順風満帆。ところが５０歳の誕生日を境に、物忘れでは済まない異変に気づく。講演先の壇上で言葉を失念、キャンパスでランニング中に迷子になる。夫に付き添われ診察を受けた神経科の医師から告げられた病名に衝撃を受ける。

　「いっそ、がんだったら良かった。アルツハイマーなんて格好悪い」

　アリスの悲痛な叫びを受け止め、戸惑いながら温かく介護するジョン。日を追って記憶を失うアリスは、スマホやノートパソコンを駆使して「明日の自分」にメッセージを残してゆく。

　だぶって見えたのは、日本に“終活”を根付かせるきっかけとなったドキュメンタリー映画「エンディングノート」だ。砂田麻美監督が、会社をリタイアした２年後に末期がんとなった実父を丹念に撮り続けた。

　両者に描かれているのは、誰もが避けては通れない仕舞い支度との向き合い方。映画館を後にして何ができるか考えた。まず、あす１日を大切に生きよう。　（中本裕己）